さすがに昨夜は眠れなかったな、いやウトウトした夢のなかにも出てきたよ。
今朝は朝からトラブルでバタバタと出かけたのはそんな要因があったせいだろうか?
朝一の仕事を終えて戻る車中のなか、まだ君がいるんだろうかと、いなかったらどうしようかと考えながら戻ってきたけれど、どうやら間に合ったみたいだ。大勢の人に君は囲まれていた。
僕の子供の頃から君の姿は変わらない。悠久の数百年も生きてきた君には今生きている僕たちの年齢なんて少しの間のことなのかもしれない。春には芽吹き夏には繁り、秋には色づき、冬には落ちる当たり前のルーティンも確実に何かを削っていたのだろう。
僕の知らない大昔に君は雷に打たれて傷ついていた。でもそんな姿で立ち続ける君をみて単純に「すごいね」って思っていただけだった。そんなわけがなかったのに。
10年くらい前に少し細身になった君の体を心配してダイエットメンテをしたんだよね。もう大丈夫だろうと安心したけれど、昨年の嵐で大地が裂けたのをみて、強風が吹く度に悲鳴を上げる君をみてもう…という気持ちになってしまったよ。
まさか、僕がそんな決断をしなければならないなんて思わなかったよ。
みんなで話し合ったあの日以後、僕は電話が出来なかった。電話をしたらもうお別れだからね。でも、岐阜で君の兄弟が倒れた一報を聞いてもう避けられないんだなと思ったよ。
そういえば、君は小学校の校歌にも登場していたね。そこから毎朝何人の子供達の笑顔を見つめてきたのだろうか?そんな校歌は何千人、いや万人の子供達が君の名前を呼びながら歌ったのだろう。僕もその中の一人だ。
だから、僕は伝えなければと思ったんだ。一昨日。伝えてきたよ。そうしたら、小学校の校内放送で全クラスに先生から君の事が告げられたらしい。教室は
「え〜!」
って大騒ぎだったらしいよ。僕の子供も何でってお友達から聞かれたらしい。みんなから愛されていたんだね。
最後の今日、君の姿を改めてみた。もうボロボロだったんだね。足元から頭まで…本当に。みんな驚いていたよ。
専門家が君の姿をみてこう言っていたいたよ
「立っていることが奇跡ですよ」
って。
頑張っていたんだな。
最後、僕は君の肩を叩くようにポンポンと触れた。
「お疲れ様」
という気持ちを込めて。
そういえば、数百年も生きていた君に子供が生まれていたんだね。今まで君は親のように沢山の人々の事を見守ってきたけれど、今度は僕たちが親になって君の子供を見守ろう。少なくとも僕が生きている間は僕が年上なので親代わりだ。
「再生の樹」
と僕は君のことを呼ぶことにしたよ。内緒でね。
君はとても頑張ったと思う。君はとても耐えたと思う。
お疲れ様。
ごめんね、ありがとう
【追記】
どのように見守っていくか大体の方向性は見えてきました。ただ、生き物ですので皆様のご協力が必要です。子供を育てて将来世代に残しましょう。
この記事へのコメントはありません。