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萎む氏子組織と村の氏神神社の将来〜前編

ちょっと実感する厳しい話しをしてみますか。

ここ数年、御朱印やテレビの影響もあって過去にないくらい神社ブームだと思います。おそらく、各地の神社も参拝者が増えているんじゃないでしょうかね?でもそのような神社はほんの一握り。テレビでやるような大きな神社はきっとこれからも崇敬と観光のなかでやっていけるでしょう。また、私達が常駐し奉職するような小規模神社もアイデア次第では……特にこのような御朱印ブームで地域の神社に注目が集まりやすい今ならね。でもね、日本には神職が常駐し奉職する神社より、普段は無人の神社の方が圧倒的に数は多いんだよ。そのような神社はどうなってしまうのか?

最近、神宮大麻の頒布や兼務神社の祭礼を通して感じることがあるんだよね。それは氏子の減少です。守谷市は人口増加傾向が続いているけど、各地域の神社の氏子数は確実に減っている。人口増加地域ですら氏子が減っているので他の市町村では尚のことと思います。過疎地域では壊滅的な神社運営を迫られている所もあると思う。昔は過疎化なんて言っていたところも、今では限界集落になって町の形態が困難になりつつあるって友人の宮司さんが話していました。

地域の神社には氏子という組織があります。地域の神社を支えてくれる大切な組織です。私の神社は年末に氏子名簿に記載されている方々に総代を通して頒布するようになっています。11月末から各神社に頒布名簿と一緒に神宮大麻を届けます。その時に一言添えます。

「氏子名簿内容に変更があったら備考欄に記入をお願いします」

その御札は12月末くらいには名簿と一緒に残った神宮大麻が帰ってきますが、毎年、帰ってくる神宮大麻の数は増えています。そして、名簿にはこのような内容が必ずと言って良いくらい記入されているんだ。

誰々さんヤメ、誰々さん氏子抜け、誰々さん返却……

大量の神宮大麻が返納されてきます。理由は様々。家庭に不幸があった。家庭内で神棚をお祀りする継承が行われなかった等々。しかし、一番の要因は核家族化による跡継ぎの不在が多いと思いますね。今は長男でも家を継がない時代になりました。八坂神社周辺では旧家が多いんですが、同居世帯は少なくなっています。そして、いつの間にか分譲住宅かアパートになっている。ではそこに住む新しい方々は氏子になってもらえるのか?その話しは後編に纏めて綴りましょう。一番大切な所なので。

先年末、びっくりする電話があってね。

「弁護士の○○というものですが…」

!?何の連絡??と思いましたが、ある神社の氏子さんの後見人になったとのことで、地域のお付き合いの中で負担をしなければならないものを教えてほしいとのこと。弁護士さんは、神社やお寺や町内会のお付き合いの把握をしたかったようです。その中で町内会の方から神社の神宮大麻について聞いたようで。

「信仰の自由もありますし御札は強制ではありませんので、本人の意思表示が無ければ受けて頂かなくても結構ですよ。」

と話しました。うーん、氏子がどんどんどんどんといなくなってしまう…

また最近は兼務神社の祭礼の直会でこんな話しを良く聞くようになりました。

俺等のあとは神社を守るヤツいないぞ。子供はそんな気持ち無いだろうし氏子は減るだろうし。行く先はないな。

こんな話しを祭礼後に何度も聞きましたね。

建物が傷んでいるんだけれども、氏子に寄付をもらって直すにもお金が集まらないからいっそのこと建物をなくして石碑みたいに出来ないか?

なんて相談もありました。

共通して言えるのは、もう氏子組織が成り立たなくなってきてしまったということ。地域の神社の維持管理が出来なくなってしまったと言うこと。分かりますよ。氏子だけで守っていくのは金銭的に大きな負担になります。無人の神社にまとまった収入はありません。地域の人が祭礼時に出し合ったお金で祭礼を維持しているのがほとんどです。氏子件数だって本当に少ない。なかには15軒しか氏子がいない兼務神社だってあるからね。もし、神社が台風で傷んだときに直すとなったらいくらかかるのか……いつも話ししていますが、伝統文化を守るために必要不可欠な要素は二つ。お金と気持ち。これは両輪。果たして収入の少ない神社において氏子が少なくなっていく実状がどのような結果になっていくのか……言わずもがなです。

ましてや最近は銅板泥棒の被害も。私の兼務神社も被害に遭いましたが修繕費の見積もりは230万円でした。

いや、厳しい。なかなか無人のお寺って無いけれど、無人の神社はたくさん存在する。神職が常駐していれば、神職の活動によってある程度の神社の収入が見込めるだろうけれど、神職不在に氏子減少で収入の見込めない神社はどうやって維持すれば良いのか?神社本庁や神社庁にはこのような経営危機に瀕している神社のケアを考えてもらいたいな。いま、戦前戦後生まれの総代さんが70代、80代になり代替わりしたくても核家族化により家庭や地域で伝統継承が難しい時代に入ってきているのは間違いない。このままでは間違いなく神社界、特に地域の氏神様を通した信仰の場は厳しい状況下に置かれるだろう。

自分が宮司にならず氏子として日々過ごしていたらどのように神社と向き合っていただろうか?少なくとも20年前のあの時にはお祭りは好きだけれど特段神社に興味がある人間ではなかった。そのまま大人になっていたらどのようになっていただろう?きっと次男だし地元にいることはなかったと思うな。新興住宅街やマンションに住んで神社とは縁遠い生活をしていたと思う。そのような人が多いと思う。

同業者のなかにもこの業界は先細りだからなんて嘆いている人もいる。でもね、職業として神職でいる以上はそうならないように努めなきゃならない。嘆く前に行動しないといけない。だから、八坂神社では氏子の気持ちを保つためにと文化財事業もしたし、祇園祭の改革も行ったし……でも兼務神社まではなかなか手が回らないのも実状なんだよね。実際に兼務神社なんかは年に一度しか行かない場合もある。これじゃ教化活動は難しい。いま、私は兼務神社では家庭の神棚に氏神様を祀りましょうって活動から始めています。先ずは神棚から。自分自身も最近になって兼務神社の事を考えられる精神的なゆとりが出来てきたような状況で……反省ですね。

で、前置きが長くなりましたが、そのような状況で総代から相談を受けたら宮司としてこんな話しをしています。もしかしたら厳しくて冷たいと思われる内容かもしれないな。しかし、総代さんにも現実を理解してもらいたいから。社家ではない外部者の私は確信に近いものがあるんだよ。神社界の大きな課題として体質的な問題。それは神職の世界も氏子の世界も共通していると思う。もしかしたら同業者には怒られるかもしれないけれど、敢えて言うならば

「保守的で村社会であることが先細りさせている」

以前、ここでも書きました

辞書には村社会のことを「集落に基づいて形成される地域社会。厳しい秩序を保ち、しきたりを守りながら、よそ者を受け入れようとしない排他的な社会をいう。」と書いてありました。

町内会の件数は増えているのに氏子が減るのはなぜ?

ここに問題が集約されています。あくまで私が守谷市の宮司として奉職している経験からの話です。全部の神社に当てはまるとは限りませんからね。では、実際にどのような問題点があり村社会になってしまうのか。次は中編?後編?で

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