無人の神社にも宮司はいるのか?
皆さんも無人の神社をお参りした経験があると思う。宗教法人になっている神社には必ず宮司が就任している。例え無人だとしてもね。
宗教法人の構成要件は、
宗教団体の要件
○ 教義をひろめる
○ 儀式行事を行う
○ 信者を教化育成する
○ 礼拝の施設を備える
と宗教法人法で定められている。この構成要件を満たさないと解散命令が出てしまうわけだ。神社風に分かりやすく言えば、宮司が存在して、お祭りをして、氏子を教化して、拝殿などの施設がないと神社は宗教法人として認められない。たしか、宮司が欠員になって2年過ぎると解散命令の対象になるんじゃなかったっけかな?
神社は神社の数に対して宮司の数が圧倒的に足りない。なので宮司が何社の神社も掛け持ちしているのはこの業界ではごく普通の事だ。例えば私なんかは本務神社が八坂神社でその他に兼務神社が11社。合計12社の神社を担当している。実は宮司に就任したときにはお祭りをやっていない神社なんかもあって、お祭りをしましょうなんて兼務神社の総代さんのところまでいって説得したこともありましたな。もちろん、お祭りをやるようになりました。
本務神社
本務神社は宮司が常駐している神社の事。私で言えば八坂神社。本務神社には基本常駐しますが、専門職で奉仕できない宮司は、普段は別のお仕事をしている場合があるので無人のように感じてしまう場合もある。これからの話しは宮司が専任で奉職しているのを前提で。じゃないとこんがらがってしまう。
本務神社の宮司は、朝、出社して夕方退社するような方が多いと思う。勿論、私もそれです。就労規則があるので職員は労働基準法に定められたように働きます。会社と一緒。宮司は役員なので一般職員とは違いますので30日休み無しで働いても問題ない。もう、私なんかはほとんどそれですね。で、神社を運営するには総代会や責任役員会があってその方々と協議をしながら祭祀や経営方針を定めていきます。それに従い、宮司が代表として常に神域に目を配らせながら奉仕をする。社殿の清掃や七五三、地鎮祭の祈祷などは八坂神社として行い、宮司は神社の収入などは会計帳簿を管理し予算決算を責任役員会で行い運営していきます。本務神社で起きた事件や事故などの法的責任は基本的に責任役員が追います。厳密に言えば総代は祭祀を決定する機関のなので神社の法的責任を負うことはありません。神社の総代は年末になると氏子に神棚の御札(神宮大麻)を配ります。総代の大切なお仕事。ちょっと覚えておいて下さい。
本務神社では宮司は全てのことを行います。では、兼務神社ってなんなのか?無人の神社はどのように運営するのか?あくまでも私の例ですが。
兼務神社
兼務神社はどのような仕組みになっているのか?もちろん宮司は普段は不在。神域は氏子さん達が守ります。会計などの財産管理は本来であれば宮司が行うところですが、民法上の委託契約により氏子総代が会計を行うのがほとんどだと思います。兼務神社の維持管理は氏子の皆さんに委ねているのが現状ですね。宮司は年に1、2回の祭礼の時に伺い祝詞を奏上する、また、年末の神棚を配っていただく。それらを収入として納めていただきます。じゃ、兼務神社が多ければ多いほど収入が増えるんじゃない?って単純に思われるかもしれませんが、ひとつの兼務神社から宮司に納められる収入は本当に少ないと思います。
じゃ、宮司って兼務神社に必要あるの?って思われるかもしれないけれど、最初に言ったとおり、神社には宮司が就任していなければ宗教法人として認められない。なので神社には必ず宮司が必要です。ですが、本務神社であろうと兼務神社であろうと宮司が代表役員なので、兼務神社で起きた事件事故なども宮司が責任を負います。なので、普段は氏子さんがやっていますから私は関係ありませんは通用しません。宮司の負担は大きいものです。
私も兼務神社を預かっていますが、台風なんか来るともう不安で不安で。震災の時も全ての神社の被害調査に行きました。被害があれば神社庁に被災報告の届け出をして。兼務神社が多ければ多いほど自身の経営リスクは高まります。また、神宮の遷宮などの時には遷宮の負担が兼務神社の数だけ納めなければなりません。宮司は全ての神社の総代と円滑な運営を求められます。
近年、神社の総代は昔のような地域の有力者が就任するようなことが減ってきました。当番制になったり、自宅に神棚のない人、または他宗教を信仰しているのに順番だからといって総代に就任していた例もあります。そうなってくると神社の維持管理は厳しいんですよね。「俺は別の宗教を信仰しているからそれが総代の間は神社は修繕しない!」ってなんで総代を受けちゃったんだよ?って正直思いましたね。もし、本務神社で神棚がない、他宗教を信仰していると事前に知っていたら、私だったら絶対に就任を認めていません。ただ、兼務神社は氏子が管理していることがほとんどなので、兼務宮司はなかなかそこまで介入できないのが実情。もし、口うるさく言えば普段はいないくせにといわれてしまうだろうな。
結局の所、違いって
宮司の法的責任は変わらない。財産管理も宮司の責任だけど、日常の神社の管理は本務は宮司がメインで兼務は氏子がメイン。
一人の宮司がいくつもの神社を受けもつのが実情で、神社を多く管理すればするほど宮司の責任は増えて行く。
細かくいえばもっとあるけれど、大体はそんなところだろうか。
この記事へのコメントはありません。