私が宮司になるときに

私が宮司になるときに ⑲8年間の複雑

私が宮司になる日

平成21年7月のある日。その日は神社庁で会議だった。私に委嘱状が交付される日。本務神社の委嘱状は神社庁長より直接交付されることになっていた。会議が終わった後に神社庁の神殿に招き入れられ庁長の前に私は立った。

「八坂神社宮司に任ずる」

庁長のその言葉と共に私は委嘱状をいただいた。この時、私が宮司に就任した瞬間だった。

8年の複雑

委嘱状を受け取り、私は靴を履いて神社庁のエントランスに建っていた。そして交付されたばかりの委嘱状をじっとひとり眺めていた。その時だった。

ある女性宮司が私に話しかけてきた。

委嘱状見て何にやけているの?宮司になったのが嬉しいのかい?

私は半笑いだった。それは今でも良く覚えている。私は率直に答えてしまった。

この紙切れ一枚もらうのに8年間色んなことがありすぎて見てたらわらけてきました。嬉しい事なんて何一つありませんよ。

もしかしたら、宮司の委嘱状はこの業界の人にとって大切なものなのかもしれない。額に入れて飾っている人もいるからね。気分を害される宮司がいたら申し訳ない。ただただ私は「8年間何だったんだろう?」と思えてしまった。心の中は洗濯機のようにグルグルである。視界は度の強いレンズの眼鏡をかけたようにグルグルである。

必要な8年間だったのかもしれない。
遠回りな8年間だったのかもしれない。
思いの外、早い8年間だったのかもしれない。
随分時間の掛かった8年間だったのかもしれない。
みんなに応援された8年間だったのかもしれない。
誰かを犠牲にした8年間だったのかもしれない。
自己中心的な8年間だったかもしれない。
疎まれた8年間だったのかもしれない。
人を信用できなくなった8年間だったかもしれない。
人を信用できるようになった8年間だったのかもしれない。
自分自身がなんなのかを問いかける8年間だったのかもしれない。

携わってくれた人達がそれぞれの瞳で僕を見る。

おめでとう、がんばれ、ざんねん、だいじょうぶか、のっとられた、

…私は何で宮司になったのか?望まれたのか?望まれなかったのか?

良く分からない「8年の複雑」という感情がわき出てしまい、委嘱状をみる私の表情は他人からはきっと何とも言えないものに見えたのかもしれない。

薄い紙を眺める私は笑ってしまった。涙なんてあるわけがないし、嬉しいとも思わない。

私は常磐道を走らせながら守谷へ向かった。考え事をしながら。

やることはこれまでと何も変わらない。ただ法律的に本当に責任者になってしまった。もう全てのことから逃げられない

と。

いま、10年たっても気持ちは変わらない。

やることは今までと何も変わらない。法律的に本当に責任者になっている。全てのことから逃げられない

ただ、氏子に喜ぶだろうと思うこと、それ信じてやっていこう。


昔も今もこれだけは自分に言って聞かせている。

全ては自分に責任がある。そして起きうる全ての事柄は私の糧になると。


 

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