あの日にあった出来事
私は宮司になることが許されたあの日、会議で何があったのかを私は知らない。
そんなある日に私は用があってある方の家に伺うことになった。その方は大変お世話になった方だった。
「上がってよ」
いつも私の話を聞いてくれていたその方はいつも私を支えてくれていた。
ある日の神社の飲み会のこと。酔っ払った年配の方がその方にこう切り出す。聞きたくなくても聞こえてくる。
「下村に好き勝手やらせるんじゃねぇよ」
「神社がめちゃくちゃにされちまうぞ」
「大丈夫ですよ、私が常に彼を見てますから」
私はその方が一所懸命年配の方をなだめているのは分かっていたんだ。なんでかって?なぜなら、そんなときに私を心なく思う人は必ず一緒になって私の文句を言っていたからね。その方はいつも二人で話すときに何とか下村さんがやっていけるように応援するからなと口癖のように言ってくれていた。
「話がまとまって良かったね」
「これも皆さんの支え合ってです。本当にお世話になりました」
そしてその方は私の知らないあの日の話を始めたんだ。
反対派と賛成派
あの日の話はこうだったらしい。後任宮司について私の名前が挙がった際に年配の総代を中心とした反対派と若い総代を中心とした賛成派に分かれていたらしい。
年配の総代の意見はこうだ。
「下村は若すぎて能力が不十分、時期尚早だ」
「よそから宮司を呼んだ方が良い」
「神社を好き勝手にされてしまう」
「神社を乗っ取られてしまう」
「神社は氏子のものである」
それに対し若い総代達はこう返したらしい。
「あなた方からみたら誰だって若くなるだろう?」
「時期尚早という人は何時までも時期尚早という」
「妻と子供を立派に食べさせてる者に能力不十分は失礼だ」
「これまでの下村の実績を見てやれ」
「氏子は宮司を支える立場だろう?」
「地元に下村がいるのによそから呼ぶ必要なんて無い」
という話らしい。
そして、話が出きった頃に総代長が結論を出しましょうと下村さんを宮司に推薦することでよろしいでしょうか?と話をまとめて会議が終わったとのこと。
「みんな、下村さんを宮司にしようと頑張ってたんだよ」
「ありがとうございます。期待に応えられるように頑張ります」
同じ事をしていても世間の評価はこうも違う。いつも思うんだ、この時の気持ちを忘れないでいようって。
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