ある疑問から始まった
私の神社では「牛頭天王宮」という御朱印を記していた。もう10年以上その名前で記してきたかな。
なぜ八坂神社と書かないかと言えば、元々の社号が牛頭天王宮だったので。年長者は八坂様とは言わず天王様と呼ぶ。この呼び名が無くなってしまうのは勿体ないなと思い、敢えて仏教的な名前で御朱印を書いていたんだ。
でもここにきて、神職をしてきて現在の神様の名前を書かないで良いのだろうか?って言う疑問が芽生えたのがこの御朱印の出発点で。それが昨年の夏くらいだったかな?それも普通に書いたらつまらない。試行錯誤してあっ!幟の文字を御朱印に出来ないかな?って思ったのがこの試作御朱印。
二つの種類の幟をミックスして出来た御朱印。結構練習したんだけれど……しっくりこない。納得出来ない。ダメかな〜?ボツだな。
お正月の準備の最中に
12月、お正月の準備に忙殺されて新しい御朱印のことは頭から無くなっていた。そんななかの12月30日、大晦日の前日にパソコンを開いて事務作業をしていたとき。目の前にあったうちの御朱印帳を何気なく見ていたらパーンと閃いた。
御朱印帳の図柄ってよく考えたら御朱印のサイズと一緒だよな…見開きで表現出来ないかな?
面白いかも!と思い立ったが吉日って訳じゃ無いけれど、こうなるとお正月の準備は中断。それに集中。MacBookの中にしまってあった御朱印帳のイラストレーターのデータを探し出してフォトショップで加工を始める。
うーん、元データが一枚絵のデータだからこりゃ大変だ。レイヤーで分かれてない。なんて愚痴を言いながらとりあえず作ってみる。が、結局はお正月の準備で一旦中断。
それから年が明けて1月5日。夜だったかな。早速作業を再開。
お!それっぽく形になってる。印刷して文字を入れてみよう。
うん、悪くない。後はこれを判子で表現出来るかどうかだな?
判子屋で
節分が終わり判子屋向かう。雲の部分と神様の部分と八岐大蛇の部分、三つのパーツに分けて押せないかと考えた。
これで判子来ますか?
これは大変ですね。工場と話し合ってみます。
ここで色んなオーダーをさせてもらった。2月下旬、私は明治神宮に泊まり込みの研修に行くことになり、ここで一旦中断したわけで。3月になって見積もりが上がってくる。シャチハタの判子って奴でいいのかな?結構な値段がしたんだよね。この金額の判子で御朱印をやって良いものなのか?ちょっと良くないな、少し考え直そうって思って3月は問題点を考えた。
1、この判子では御朱印帳に印を押すときにぴったり押せない
2、様々な御朱印帳のサイズに合わせられない。
3、値段が高すぎる
課題が結構あるな。と考えているうちに判子屋さんが神社に来てくれた。
インク補充方の判子では枠があって紙の際が見えずらいので従来の判子のようなもので出来ませんか?あと、雲なんですけど二つに分割してほしいです。そうすればどんなサイズの御朱印帳でも対応できると思うんです。
分かりました。やってみましょう。
ワガママな客だったでしょうね(笑)
ほどなくして新しい見積もりが来る。判子の種類が変わったので前回よりも半額以下だ。これなら大丈夫かな?
では、これでお願いします。
判子の納品
4月25日、令和まで1週間を切った頃に判子が納品された。試し押しをしてほしいとのことだった。どんなものだろうかと押してみる
。…これはダメだ。重いし紙にしっかり押せない。クオリティーが下がる。
申し訳ないですが厳しいです。ここをこうしてこうなりませんか?
じゃぁここをこうしましょう。下村さん、これから10連休で工場が休みになりますから納品は10連休明けになりますけどよろしいですか?
仕方が無いです。大丈夫ですよ。
そして、判子は作り直しになったわけで、基本的にその頃の私は令和元年にあわせてって気持ちじゃ無かったので間に合わなくてもいいですよ、くらいの気持ちだった。間に合ったら間に合ったらで元年初日に頒布できればって思っていたくらいで。何故かって?今から思えば令和元年5月1日があんなに混みあうなんて思っていなかったからね。
その頃、ツイッターであたらしい御朱印は5月中頃予定です、と呟いていた。
そんなとき、令和元年に向けてって気持ちが強かったのはむしろ判子屋さんだった。電話が掛かってくる。
下村さん、私、いま東京の工場まで行って掛け合ってきますから10連休前までに納品できるように掛け合ってきますよ。
…悪いことしちゃったな。私よりもみんなの方が節目を意識してる…そして28日…新しい判子が納品されたんだ。
押しやすい、ばっちりだ、これならいけるぞ!判子屋さん有り難う!って思ったのもつかの間であぁ、練習しないと!字が下手のままだ。そう、私はもうGW明けで練習してからにタイミングを見て頒布しようと思っていたのでそれっきりだった。
マズイ…平成残り2日しかないじゃん!
ハイ、練習しました。
めっちゃくちゃ練習しました。でも、下手だねぇ。でもおかげさまで自分の中の御朱印ルールを守りつつも喜んでもらえる物が出来たかなと思います。
私の中の御朱印ルール
今、色んな御朱印があります。それは皆さん色んな努力されて出している物であり私は否定をするつもりはありません。ただ、私の中では御朱印はこうしたいというルールがあります。それは、
1、カラフルな色は使わない
2、手書きであること
3、印刷、書き置きのみの御朱印はやらないこと
4、社務は祭祀優先なので記すのに手間暇をかけないこと(絵を描いたりしない等)
私の神社は小さな神社で神職数も少ないです。そんな中で掃除をしたり、祭祀をしたり、会議をしたり、打ち合わせをしたり、やることは多々あるわけで、そんななかで手書きをしようとすると今流行の限定御朱印とかカラフル御朱印は無理ですよね。それにここの記事にも書きましたけど
やっぱり御朱印は直接書いてこそって言うのがあるんだよな。
この御朱印、私なりに試行錯誤してルールを守る中で出来上がりました。
喜んでもらえたら何よりです。そして令和元年5月1日に続くのでした。
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