私が宮司になるときに

私が宮司になるときに ⑤そもそも宮司の地位は遺言できるのか

本当にくだらないことに巻き込まれたと思った。自分が撒いた種だったのだろうか?それともこうなる運命だったのかな?社家じゃ無いもう一人の私より若い彼が結局は私と同じような境遇にいたわけだから。部外者には厳しい世界だよ。ただ、私にも8年間、神社だけで頑張ってきた自負がある。私と彼とは違う。しかし、突然出てきた遺言話。昨年から兼務神社で宮司が発言した来たことを考えれば予想は出来たけれど、あぁ…本当に面倒なことになってきたなと思ったな。

しかし、宮司の地位を遺言で決めるなんてのは、普通の感覚では無しだと思うけれどね。譲る方も譲られようとしている人もそれで継承できるなんてのは、神社の私物化に他ならないとその時に感じたな。特に譲られようとしている人ね。どうしてもあの八幡様の事件を思い出してしまう。宮司職はなりたくてなるものではなく、認められてなるものだと思うんだけれど…

で、根本的なことを考えてみたい。

宮司の地位は遺言できるのか

本当に代表役員の地位は遺言で決められるのか?

法律上、遺言で決められることは以下のような事がある。

  1.  推定相続人の廃除 又は廃除の取消し(民法第893・894条)
  2.  相続分の指定又は指定の委託(民法第902条)
  3.  遺産分割方法の指定又は指定の委託(民法第908条)
  4. 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言
  5.  特別受益の持戻し免除(民法第903条3)
  6.  遺産分割の禁止(民法第908条)
  7.  遺贈の減殺方法の指定(民法第1034条但書)
  8.  相続人相互の担保責任について指定(民法第914条)
  9.  遺贈(民法第964条)
  10.  財団法人の設立(寄付行為)(民法第41条2)
  11.  信託の設定(信託法第2条)
  12.  子の認知(民法第781条2)
  13.  未成年後見人、未成年後見監督人の指定(民法第839・848条)
  14.  遺言執行者の指定又は指定の委託(民法第1006条)
  15.  遺言執行者の職務内容の指定(民法第1016条1・1017条1但書)
  16.  祭祀承継者の指定(民法第897条1但書)
  17.  遺言の取消(民法第1022条)
  18. 生命保険金の受取人の指定・変更(保険法第44条1)

このように考えると代表役員に関わることの遺言は無いように見える。でも会社の場合には株式の持ち分などがあるから、例えば会社の社長である親が亡くなったときに株式を子供が相続した場合にはその持ち分によっては影響力が大きくなるのではないかと思う。結果的にはそれによって代表取締役の就任することもありだろう。間違っていたらすみません。

では、宗教法人、とりわけ神社の事ではどのように考えればいいのだろうか?宗教法人には持ち分という概念が無い。では、どのように選任されるかと言えば、責任役員の選任で決定する。それだけです。ここで注意しなければならないのは総代が決めることは出来ないと言うことです。昨今、茨城県内である神社の宮司がパワーハラスメントで氏子から解任要求がありましたが、基本的にはそれによって宮司が辞める事由にはなりません。あくまで責任役員が宮司の進退を決めることになります。因みに神社において責任役員が決められることには以下のような事があります。

  1. 総代の選任方法
  2. 宮司、権宮司及び宮司代務者の進退
  3. 不動産及び不動産以外の基本財産或いは宝物などの取得、設定、変更或いは処分又は担保
  4. 借入及び保証
  5. 主要な境内建物の新築、除却その他の変更
  6. 境内地の変更
  7. 特別会計の決定
  8. 予算、補正予算の決定、決算の承認
  9. 財産目録
  10. 規則の変更
  11. 宮司が必要と認めたこと

とにかく、神社には株式のような持ち分が無いので、氏子や総代が責任役員会に法的に関与する事は出来ません。逆に言えば、社家の人間も遺言で自分の子供や親族を代表役員宮司に就任させるように遺言することも出来ません。もし遺言したとしてもそれはあくまでも希望です。その禰宜さんは遺言があるからと私に言ってきました。神社の法規を分かってるのかな?結局は氏子との信頼関係なんですよ。それが無ければ地域では仕事は出来ません。

さて、私は今後どうなっていくのでしょうか?

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