異変、それは突然のことだった
年月は巡り平成21年4月。
八坂神社の決算は3月末で締めることになっている。私は毎年決算報告書を制作し宮司に目を通してもらってから八坂神社の責任役員会に報告することになっていた。毎年4月の頭には決算書を制作し宮司の本務神社で目を通してもらう。ここの席で昨年度の実績を考慮しながら私の給料などを決めてもらっていた。決算の度に必ずと言って良いほど神社の運営の事で意見が食い違う。
宮司「毎年、神社としての収益が増えているようだからこんなにいらないでしょう?氏子さんに渡せば良いんじゃないか?」
私「そのような宗教法人の経営は二重会計になり税務調査や労基署調査などが入ったら宮司さんの雇用者責任が問われてしまいますよ。宗教法人の収入を別の方の名義にしてしまったら所得を隠しているとの疑いをかけられても仕方がありませんよ。もし、預かるとしたら法律に従って宮司さんが全て預かって下さい。」
仕事を頑張れば頑張るほど私が管理する神社の収入を減らせと言われたら給料を減らせと言われているようなもんで、聖職者であっても労働者であるわけで結婚もしているし子供も生まれているしでたまったもんじゃ無かった。決算の度にこんな感じで。
最初の頃はまだ神社で社会保険や厚生年金に入っていなかった。結婚を機に入りたかったけれど、自分が責任者では無く、神社の経営責任者もこのような感じだったのでとてもじゃないけれど入れなかった。神職だって一労働者。労災だって入りたい。まして結婚して子供がいる以上は安心して仕事がしたかった。とにかく自分で判子を押せるようにならないと実際の仕事との乖離が激しく安心して仕事に集中は出来なかった。何かあったらどうしよう?この頃はそればっかりだったな。
この年、ある決意をもって会いに行った
平成21年の決算を報告に宮司の元へ向かった。私はある決意を持って向かった。昨年からの兼務神社を取り巻く様々な事もあり、私は私なりに今後のことをどうしようかと考え始めていた。八坂神社の方は軌道に乗り始めていた。が、仕事が増えれば増えるほど、家族が増えれば増えるほど安心して仕事が出来ない。今のままじゃ将来はどうなるんだろうと考えたときに、私はやっぱり宮司にとっては兼務神社のひとつかもしれないが、私はそこで宮司に雇用されている職員として今一度法令に従って運営してもらえないか一筆したためて決算に望んでいた。
「決算報告でまた同様の話になるだろう…そうしたらこの意見書を出そう」
と、思っていた。また、生意気なやつと思われるかもしれない。八坂神社の宮司就任も無くなるかもしれない。でも私にはもっと大切なことがある。今、この時に家族を養うために必要なこと。これだけで動いていた。自分の正しいと思っている事を言ってダメだったらしょうがないじゃないか。これでダメならそう言う縁だったのだろう。
そして、決算報告が終わった。そして話が本題に入ろうかとしたときだった。
宮司「今日は微熱っぽくてね。詳しい話はまた今度にしてもらえないかね」
私はこの日が宮司と会う最後の日になるとは思わなかった…
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