一般人が宮司になるまで

一般人が宮司になるまで ㉙祇園祭の改革

将来を見据えた自分への課題

この頃、私は2つの課題を自分に課していた。1つはもちろん神社で食べて行けるようにすること。仕事が成り立たなければ生活が成り立たない。そのために神職の資格を取得し、様々な話し合いや活動をしてきた。それは今までの投稿をご覧いただければと思います。そして、もう一つ。この頃に自分の中で考え始めたこと。それは祇園祭の改革。お祭りをどのようにするか。そんなことを考え始めた。

当時、八坂神社のお祭りを祇園祭と呼んでいる人は少なかったんじゃないかな?私自身が氏子の時に祇園祭とは言わなかったから。八坂の祭りって呼んでましたね。氏子から神職に立場が変わり、何年か奉職してそれなりに知識を身につけてくると色んな疑問が湧いてくるんです。

「どれだけの氏子がお祭りの意味を知っているんだろう?」

私が知らなかったことを私と同じ年代の人がどれだけ知っているのだろうか?以前、青年会の集まりに顔を出したときに、その時の青年会の会長さんが「お祭りってなんでやってんだろうな?」なんて話をしていたのが耳から消えない。祇園祭の総代会の時にも会議の内容はお祭りの進行のことで信仰の話はなかなか出てこない。意味も分からずにお祭りを行うことほど危険なことはない。何となくやる。時季が来たからやる。意味が分からないでお祭りを行うとその時の役員の意見でずっと守ってきた伝統や文化があっという間になくなるリスクがある。100年お祭りを続けるには100年も時が必要だが止めるのは一瞬で十分だ。そのためには氏子さんに祇園祭の意義を理解してもらう。そんな必要性を感じ始めた。

この頃はつくばエクスプレスの駅前開発で氏子がゴッソリと立ち退きしてしまい、祇園祭が縮小傾向へと進んでいることでした。この祇園祭をどのように守っていくか。消極的では無く積極的にだ。例大祭を通して神社を信仰し地域に愛着を持ってもらう。これは神社の大きな使命だと思っています。

とは言っても当時はまだ私の立場は禰宜。責任者でも無く、そんなに大それた事を出来るわけでも無く、その時その時に出来そうなことを総代会で生意気にも発言していましたね。30歳に満たない青年が70〜80歳くらいが取り仕切る会議で発言するのは勇気がいるんですよ。

私はこの頃には10年先を見据えていた。何を見据えていたかって?この頃から祇園祭を守谷市の無形民俗文化財に出来ないかと思い始めていました。漠然とですけどね。でも、そのためには私には知識、人脈、信用、役職、全てが不足していた。それらを満たしながらどのタイミングで申請しようかというのはずっと考えていましたね。

改革のテーマ

神職がやらなければならない改革は

「信仰を基本とした祇園祭」

にすること。
これが祇園祭改革のテーマでした。誰にも言わなかった私だけのテーマ。氏子には氏子の視点がある。神職には神職の視点がある。これを上手くミックスさせて盤石にしなければならない。私の最大のメリットは宮司の立場でありながら氏子の視点をもっていることかな?このメリットをフルに活用しないとね。今までは神職の視点が抜けていた。神社を何社も受けもつ兼務宮司では無理だと思います。楽しいだけでは神社のお祭り成立しない。もちろん楽しいのは重要だけれども根底に信仰がなければならない。神職として祭りの本旨を理解してもらわねばならない。祭礼は「神人和楽」が基本。神と人が一緒に和み楽しむ。「人楽」であってはならないんです。そして祇園祭を盛大に地域の繋がりを密にすることが神社を将来に残していく一番の方法だと今でも思っています。

兼務神社の欠点

私が思う兼務神社の課題は常に神職が不在のため信仰について行事を指導する人間がいないと言うことだろう。私も兼務宮司になって分かったけれど、なかなか兼務神社まで手が回らない。いま、平成30年、祇園祭改革が一段落し始めたので兼務神社の改革を始めています。やっぱり、どの兼務神社も初めての事を行うって言うのは難しいなって実感しています。それでも、兼務神社の総代さんと話し合って前に進めています。兼務神社だって大切な神社ですからね。

さて、八坂神社も100年兼務神社だったので、祇園祭の内容は改めないとと思うことがありました。自分の役職などを考えながら出来ることを少しずつ。今までの祇園祭の伝統は変えることなく改めるべき所は改めていきました。

改められた祇園祭

ここ14年くらいでしょうか?祇園祭は毎年のようにリニューアルされています。特に私が宮司に就任してからの平成21年以降は様々な面で修正させていただいております。神職の視点から。今まで氏子さんが培ってきた行事を廃止、中止にしたことはありません。私は祇園祭をより神事として行うよう補足していった感じですね。すべては氏子さんの協力があってのことです。別に私一人がやった事ではありません。氏子皆さんの祇園祭への信仰と愛情、そしてご先祖様から紡ぐ地道な活動が平成27年12月に祇園祭が守谷市無形民俗文化財指定という結果に結びついたのだと思います。

どんなことをしていったかと言えば、

  • 先ず、神輿の御旅所で祝詞を奏上するようにしました。
  • 各地区山車の出発の際に安全祈願をするようにしました。これは青年会の自主的な申し出で本当に嬉しかったです。
  • 短縮された歩行者天国の時間をある程度戻せました。
  • 遷御、還御の際には消灯するようにしました。
  • 総代が参加する祭礼を増やしました。
  • その他、神事を増やしました。
  • 清掃タイムを設けました。警察署からの提案で通り沿いの氏子さんには好評ですね。本当はゴミは持ち帰りです。
  • 祇園祭期間中に各家庭にお祀りする御札を頒布するようにしました。
  • 歩行者天国の距離を延長しました。
  • 奉納提灯事業を始めました。
  • ポスターを制作しました。
  • 無形民俗文化財指定事業を行いました。
  • 神輿が総修復されました。
  • そして神輿が宮入りするようにしました。

あれだけ下火になりかけた祇園祭がここまで盛大になったのは偏に総代皆様のご理解と地域の方々のご協力があってのことです。例大祭が盛大になって行く姿は宮司をしていて最高の充実感を感じることが出来ます。

みんなには悪いけど

みんなには申し訳ないけど、私は守谷のお祭りが一番好きだと思っています。そう、みんな自分が一番好きだと思っていると思いますよ。でもそれでいいんです。みんなお祭りが好き。でも皆さんと私が決定的に違うのは氏子と宮司と言う関係になってしまったこと。私は宮司になってしまいましたのでみんなと一緒にお祭りを楽しむことはもう出来ません。むしろ当日は胃が痛いだけ(笑)事故が無いか事件が無いか……特に今年は台風だから余計にね。でも、神社の責任者として本丸でお祭りを計画する、管理する立場になりました。

私はお祭りが大好きです。だから、私が生きている間はみんなにお祭りを楽しんでもらえるよう、絶やさぬよう頑張りますよ。みんなが楽しそうにお祭りをする。その姿をイメージしてお祭りの計画をする。そして楽しそうにしてる姿を見ていることが私の喜びです。

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