一般人が宮司になるまで

一般人が宮司になるまで ⑳社家じゃないってまるで白い巨塔のような

宮司の神社の例大祭の日に

白い巨塔ってドラマがあります。私は別に地位とか名誉とかはどうでも良いんですが、今思い返すとなんだか教授と助教授みたいだなと、そんな話です。

時は戻り平成15年の夏。

神職でありながら祭礼不参加というのは何とも言えない後味の悪さを自分の中に残していた。それとともに将来の不安を感じるようにもなっていた。このような環境で人間関係を上手くやっていけるだろうか?しかし、今更神職を辞めるわけにもいかないし、やれることはやろう。そしていつも思い出す一言主神社宮司さんのこの言葉。

「5年間は白衣袴を身につけて頑張りなさい」

まだ3年しか経っていないじゃないか。頑張ろう。

宮司の例大祭は8月だった。その都度、私も助勤に呼ばれていたがこの年は呼ばれる事がなかった。原因は分かっている。節分から祇園祭まで様々なことがあった。


ただ、自分に言い聞かせていたのは、何があっても師匠と弟子という関係性は守らなければならないと言うことだ。私は祭礼の助勤には呼ばれなかったのでお祝いの品をと思い御神酒をもって例大祭の日にご挨拶に伺った。ここで行かなければ益々不味いことになるだろう。御神酒には八坂神社と記した。一般的に神社同士で交流がある場合には御神酒を奉納する際に神社の名前で奉納することは普通の事だ。


「本日はおめでとうございます。ご挨拶に伺いました」

宮司「その御神酒には八坂神社と書いてある。八坂神社の宮司は私だから八坂神社から御神酒を頂く筋合いはない」

「失礼いたしました。」


それを見ていた別の神職さんが声をかけてくれた。


神職さん「下村君、大丈夫?姿が見えないからどうしたのかと思ってたんだよ。何かあったのかい?」

私「大丈夫です。有り難うございます。」


私が宮司に就任する際にはこの神職さんにも力添えを頂いた。その話もいつかまた。

と言うわけで、私は帰った。御神酒を置いてきたか持ち帰ったかはもう覚えていない。

一生懸命やろうとしてもやらなくても同じトラブルは起きる

私は神職だけで食べていきたいと願っていた。最初からそれは決めていた。なので何があっても仕事だけはしっかりやらなければと思っていた。収入が少なくとも人間関係に歪みが生まれようともそんなことはどんな職場にもあるじゃないか。私の基本は原則論なので法律や規則などをしっかり遵守し聖(宗教者)と俗(経営者)を両立させるだ。でも、そのことを話してからだんだんと私と宮司の目線が変わり始めて話がこじれてきたと思う。

そのから数年経って全く同じ環境で神職になった人物がいた。ただ、私と違ったところはその方は神職でやっていこうとは思っていない所だ。その人は自分から後継者のいないある宮司の所へ行って推薦して下さいと願い出た。その宮司が探して推薦したわけではない。

そのような感じで神職になったので、神社業には余り熱心ではなかった。そうなると推薦してくれた宮司も面白くない。せっかく資格を与えたのに手伝いにも来ない。良く私にぼやいていた。電話しても手伝いにもこないんだよと。詳しくはよそ様のことなので言いませんが。(ここで言う宮司は私の上司の宮司じゃないので勘違いしないで)

で、ふと頭をよぎったんだ。一生懸命やろうとしても一生懸命やらなくても同じ事が起きるんだなと。またここでこの話をするのも何だけど、結局は社家じゃないって難しいなって。子供、孫に譲るわけじゃない。身内には甘さが出てしまうが、赤の他人に宮司職を任すとなったときにその人間が自分の意にそぐわないとすぐに駄目になっていくんだなってね。社家にはそうそうそんなことは起きないだろうからね。

そんなとき、私はあることに気がついたんだ。一生懸命やろうとしても一生懸命やらなくても上司とのトラブルが起きるとしても、一生懸命やれば氏子さんは気がついてくれる、認めてくれるだろうと。逆に一生懸命やらなくては宮司にもそして一番大切な氏子さんにも認めてもらえないだろうと。

この頃、私はある戦国武将の台詞を心に刻んで働いていた。山中鹿之助の言葉だ。

「願わくば我に七難八苦を与えたまえ」

で、人間的に成長できれば良いなと。出来てるかな〜?それも氏子さんの判断に任せるとしましょう。

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