一般人が宮司になるまで

一般人が宮司になるまで ⑧そして心が折れた

思いついた、たった一つのやり方

さて、宮司との話し合いをしながら氏子総代にはどのようにしたら理解してもらえるのか?気づいてもらえるのか?もう、悩みに悩んだ。この時、26歳。何ができるか考えに考えてたった一つのやり方を思いついた。というよりはこれしか思いつかなかった。

この頃から私に少しずつだが仕事が入り始めた。当時はつくばエクスプレスの開発が始まっており、私が神職になった事を聞きつけた氏子さんが立ち退きするから拝んでもらいたいと問い合わせが来るようになった。祈祷すれば祈祷料を納めていただく。私は初めて自分で収入を得た。………………このお金は氏子さんに渡そう。八坂神社には80歳を超えた会計担当の役員がいた。会計さんに祈祷料は全て預けてしまおう。それが思いついた、私のたった一つのやり方だ。私の頂いた収入は宗教法人である八坂神社の会計にしっかりと入金し、そのお金をどうするかを氏子総代に考えてもらおう。

この考えに至ったのはこの本を買う前です。


「すみません、先日地鎮祭をしてきたのでこの祈祷料を預かってもらえませんか?」

会計さん「これ、下村さんのお金だろう?」

「いいえ、私は八坂神社の名前で働いています。一度会計に入れて、もし私が頂くのであれば神社からにのお給料という形になります。」

会計さん「そうだよなぁ……これじゃ下村さん、かわいそうだよなぁ総代連中は気づいてないのか?そういう事を?宮司はなんて言っているんだ?」


この年の祇園祭でも似たようなやりとりがあった。一般的に兼務神社では、祭礼の時だけ出社して奉仕料を頂く。私は奉仕料を返還した。

「私はここの神職なのでこのような形ではなくお給料として別の形で頂ければと思います。」

初めて氏子総代の前で給料の単語を使った。その時に何を言っているかわかっていたのは数人だろう。なかなか年長の方々には理解されなかったと感じた。

このようなやりとりを会計さんと一年間、つまり次の年の決算まで続けました。決算になれば収入の科目に祈祷料が入る。その時に気がついてもらえるんじゃないかと考えました。それまで我慢しよう。私は一年間、たまに入ってくる祈祷料を氏子会計さんに全て預けました。結局、神職を志してから2年半。私は八坂神社として収入を得ることはなかった。問題の解決は気がついてもらうこと。話すこと。今でもそれは変わっていない。それが私のスタンスだ。

そして決算へ

八坂神社では4月末に決算を行っている。この頃になると宮司は総代会に毎回呼ばれるようになっていた。私が禰宜になる前はほとんど呼ばれなかったそうだ。私がいるから宮司も出てこいと言うことだったんだろう。決算報告で雑収入に地鎮祭という項目がある。案の定、総代たちはざわつく。

総代「この収入はなんだ?」

総代「何で会計に祈祷料が入っているんだ?」

「私は八坂神社で働いていますので働いたお金は神社の収入です。」

私はお給料のことまでは話さなかった。ただ、神職が働けば神社の収入になるんですよと気がついてほしいとそれだけを思っていた。もちろん、総代の中にもそのことを意見する方もいた。お給料はどうするんだと。私が一年間、この決算日まで無収入でもこの方法で行こうと思ったのは、総代と宮司が一堂に会して会議をする席だったからだ。何人かの総代でもこのことに気がついてもらえれば、宮司から代表役員としての意見を発言してもらいたい。そこで問題提起してもらいたい。この可能性にかけたんだ。会議の前に宮司にもお願いはしておいた。そして結果は

宮司……………………

だ。

結局、私の考えはその無言でさざ波程度の事で終わってしまった(笑)

自分の中で心が折れる音がした。これはもうだめだな。

ただ、ひとつだけ予想外のことがありました。決算が終わり会計さんが辞職されました。会計さんは、私がお金を届けるたびに下村さんをなんとかしてやらないとと思ってくれたらしく、自分が辞めれば打開するんじゃないかと考えてくれたようです。

会計さん「いや、俺ももう年だから計算なんてできないからよ。」

って私には言っていました。働く場所を奪ってしまったみたいで申し訳なかった。

そして、新たに会計さんが選任された。前任の方よりも20歳以上も若い方だ。そして私は後にこの方にも助けていただくことになる。

しかし、その前に私は宮司に辞職を願い出ることにした。もう27歳になっていた。

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