一般人が宮司になるまで

一般人が宮司になるまで ⑤噛み合わない話し合い

権利の主張なのか?恩知らずなのか?

役職は違えども同じ神職なのに、海の青さと空の青さを分ける線の上で話し合う、そんな二人だったですね。どちらも間違ってはいないと思うんだ。ただ、行き先が変わってしまった。

7年に渡る話し合いは長かった。孫くらい年の離れた職員に意見を言われた事は自尊心を傷つけたと理解しています。申し訳なかったと思っています。ただ、話し合わなければ私の未来はなかったのです。神社界の方ならわかると思います。禰宜という役職に神社への権限は全くありません。本務でも兼務でも宮司の権限はそれほど大きいものなのです。ただ、兼務の場合には普段は神社の管理を氏子さんに任せっきりなので意見を言い難いのが実情です。その上、一つの神社に兼務宮司と神職で食べていきたい本務禰宜といういびつな仕組みになってしまいました。何一つ権限のない私は宮司に動いてもらわねば何も出来ません。そう、口座を作るのも携帯の契約も。そして氏子との話し合いも。

宮司との話し合い、もしかしたら行ってはいけない道だったのかもしれません。ただ言うことを聞いていればよかったのかもしれません。でも行かずにはいられませんでした。将来の見えない仕事は出来ない。私の周りは右には応援してくれる人、左には睨みを効かせる人。私を含めて全て迷子のようなものでした。それを真っ直ぐ歩くようにするには宮司の指導力が必要だったのです。

7年分の長く虚しい話し合い

7年間、こんな話を繰り返したという事です。要約で一気に綴ります。


「将来、宮司に就任させて頂くのであれば、しっかりと代表として神社を管理できる仕組みの中で働かせて頂きたいと持っています」

宮司「とは言っても氏子さんが管理しているんだから任せて拝んでるだけでいいでしょう?」


「兼務神社なら理解できますが、本務神社になるのであれば常駐する宮司に管理運営させていただけないと責任を持って勤められません」

宮司「氏子さんが今までやっているんだから下村君は任せておけば良いじゃないか。下村君が氏子さんに神社の使用料を払って残ったお金を収入とすれば良いんじゃないかな?


「神職が氏子さんにお金を払うんですか?それではただの拝み屋になってしまいます。私は神社に就職して働くという感覚でいます。宮司さんから八坂神社の会計を通してお給料をいただくというのが筋だと思います。そのことを氏子さんにご説明いただけませんか?」

宮司「僕は自分の神社があるんだから八坂神社の会計とかできるわけないよ


「ならば、私が将来宮司になるというなら、そのことをしっかり氏子さんにお話しいただいて神社を管理させていただけるようにお話しいただけませんか?私はこれで頑張りたいと思っています。氏子さんに他の神社がやっているような氏子会費などの負担も求めません。神社で祈祷をして御守りを頒布し社頭を賑やかにすることができれば結果が付いてくると思います。しかし、それらは私個人の収入ではなく八坂神社の収入です。神社での活動した収入は全て宗教法人の収入です。それは宮司でも氏子のものでもないと思います。それを分けるとなると必ずお賽銭や社頭収入でトラブルが起きるのは目に見えています。そのことを説明できるのは宮司さんだけです」

宮司「私もずっと自分の神社でやってきてね、氏子さんからこの神社は個人の神社なんて揶揄されたもんだよ。全部自分でやるのは大変だから、氏子さんに任せて社殿で祈祷した場合はそん何割かを場所代として氏子さんに渡せば良いじゃないか。神社を貸してもらっているということにしてさ


「では、宮司さんは自分の神社ではどのように運営しているんです?」

宮司「うちは全部の管理を僕がやってるよ。氏子はお祭りをするだけで管理運営は全て僕がやってるよ


「本務神社、宮司常駐になるのはそういうことだとお話し頂きたいだけです」

宮司「そうなると、全部自分が出費することになるよ。氏子さんは助けてくれないよ。この社務所を作るときだって氏子寄付は少ないし、備品を買うにしても氏子は寄付してくれないし大変だよ


「一生懸命頑張ればお賽銭だって増えてくると思います。祈祷も増えると思います。神社も整備したいし備品だって揃えなければなりません。神職が必要とするものと氏子が必要に思うものは違うと思います。そんな些細なことでも揉めると思います。私も労働者です。仕事にやりがいがないと続けられません。」

宮司「お賽銭だって全部氏子さんに渡せば良いじゃないか。面倒なことがなくて良いよ。管理は全部氏子さんに任せれば良いんだよ。


「例えば木が倒れたときに、私が宮司として常駐していれば責任は私にあります。私も氏子さんを信用していますが、もしその時にいる役員が宮司が責任とれば良いんじゃないかってなったらどうすれば良いんですか?」

宮司「そんなことにはならないよ


「そんなに大変だというのでしたら、宮司さんも本務神社の運営を氏子さんに全てお任せすればよろしいのではないですか?」

宮司「そんなことできるわけないだろう


「できないことを何故私には進めるんですか?」

宮司「君と僕とは違うだろう


「失礼ですが宮司さんはお給料の形態はどのようにされていますか?」

宮司「帳簿をつけてそれからもらってるよ


「住宅ローンを借りる時でも宮司は代表役員なので法人の運営状況も調べられます。法律にのっとらずに二重会計をしているような神社が信用を得ることが出来るでしょうか?それでは結婚もできません。安心して将来を見据えられません」

宮司「そんなんことはないよ。そんな話は聞いた事ないよ。心配しすぎだよ


「税務署の調査、労働基準監督署の調査、年金事務所の調査が入ったらどうされるつもりですか?私が本業で働けばそのような可能性もあります。宮司さんの雇用者責任も問われかねません」

宮司「今までそんな調査は神社に入ったことがない。僕に責任なんてあるわけないじゃないか


「私は宗教法人の法律に則って責任をしっかりとれる形で働かせて頂きたいだけです。それを説明できるのは宮司さんしかおりません。しっかりと私が奉仕できるように氏子と話し合う機会を設けてください」

宮司「それは……………………だからで


ほんの一部だけどずっとこんな事の繰り返しだった。このような問題がある限り社家じゃない人が民社の宮司でやって行くなんてのは厳しいと思うよ。法人を適正に運営する。当たり前のことだけど、でも地域の神社ではこれが一番難しいんだ。

宮司と話し合いをしながらも氏子さんたちにも何とか理解をしてもらわないとと思い、氏子役員には話し合いではなく、ある行動で理解してもらおうと思った。気づいてもらおうと思った。直階と正階の資格を取ってから1年間その行動をとり続けた。これにより神職になってからの無収入は丸2年半続くことになる。

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